斑尾高原スキー場に続き、妙高杉ノ原スキー場をシンガポールの投資会社PCGが買収

スキー場 国内

2022年11月3日、日本・中国・韓国のスキー場情報誌SKI ASIAに、シンガポールのPatience Capital Group(ペイシャンス・キャピタル・グループ、以下PCG)が斑尾高原スキー場を買収し、長期的な視点で投資をしていくというインタビュー記事が載りました。
そして、2023年11月9日、西武ホールディングスは妙高杉ノ原スキー場をPCGに譲渡したと発表しました。

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ペイシャンス・キャピタル・グループ(PCG)

PCGは、先駆的な不動産投資会社を目指し2019年に設立され、シンガポール(本社)と東京の2拠点で活動し、世界中の機関投資家および個人投資家のために資産運用を行います。
ペイシェンス(Patience:忍耐)は、PCGが長期投資の運用にフォーカスし、投資パフォーマンスを最優先に考え、投資家に長期的に最高のリスク調整後リターンを生み出せるよう、たゆまない努力をすることを表しています。

運用ファンド

日本の観光特化型不動産第1号ファンド(JTF One)

名称 :ジャパンツーリズムファンド1
ファンド総額 : 約350億円
ファンドマネージャー:PATIENCE CAPITAL GROUP PTE.LTD.
有限責任組合員(LP) :2023年10月6日現在での有限責任組合員は、以下の通りです。
株式会社みずほ銀行、SMFLみらいパートナーズ株式会社、三井住友信託銀行株式会社、株式会社第四北越銀行、八十二サステナビリティ1号投資事業有限責任組合、株式会社群馬銀行、シンガポールの個人・機関投資家

2019年12月に運用開始をした日本国内の観光関連資産の取得に特化した一任型ファンドで、2023年10月に投資受付がファイナルクローズしました。 

ブルームバーグが行った取材では、同ファンドで調達した約350億円は、その大部分を妙高スキーリゾート構想の資金にあてるとしています。

記載はありませんが、同社のHPにライムリゾート妙高のSPAの写真が使われており、ファンドの物件の一つと考えられます。

ジャパンツーリズムファンド1 ファイナルクローズに関するお知らせ はこちら

日本レジデンシャル・オポチュニティ・ファンド(ASTRO)
東京都心部および首都圏の住宅資産の取得に特化した一任型ファンド 2020年11月運用開始

CEO

PCGの創設者であり、CEO/CIOのKen Chan(ケン・チャン)はGICジャパン株式会社の前代表です。
同氏は、京阪ホールディングス株式会社の社外取締役のほか、特定非営利活動法人の理事を務めています。

GICとは、苗場スキー場などを買収したシンガポール政府投資公社(GIC Private Limited)のことです。

今後の展望、西武ホールディングス(プリンスホテル)のスキー場 はこちら

日本法人の決算公告

日本法人のペイシャンスキャピタルグループ株式会社の決算公告です。
売上額から考えると、投資はシンガポール本社が行い、日本法人は施設の運用管理業務のみを行っているのかもしれません。

決算末日 2020年3月31日 2021年3月31日 2022年3月31日 2023年3月31日
純利益 100万円 3500万円 2600万円 2200万円
利益剰余金 100万円 3600万円 6300万円 8500万円
総資産 1900万円 8300万円 9500万円 1億2300万円

 

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斑尾高原スキー場

斑尾高原スキー場は、長野県飯山市・信濃町との境にある斑尾山(標高1382m)の北斜面に広がっています。
スキー場のほぼ全域は「新潟県」妙高市にありますが、住所は「長野県」飯山市大字飯山です。

同スキー場の運営は、株式会社アビラが行っていましたが、2022年夏に斑尾ホスピタリティ合同会社に引き継がれました。

利用者数

2022/2023シーズンは、コロナ前を上回る利用者がありました。

シーズン 2019/2020 2020/2021 2021/2022 2022/2023
利用者数 147,524人 81,137人 125,883人 162,000人

株式会社アビラ

ここ数年、大変厳しい経営状況が続き赤字が拡大していました。

運営施設

ネットで見つけることができた施設のみなので、他にも所有している可能性があります。

  • 斑尾高原スキー場
  • 斑尾高原ホテル
  • ANA クラウンプラザホテル秋田(運営受託契約)
決算公告

2019/20シーズンの小雪、2020/21シーズンの新型コロナウイルスの影響で赤字が拡大しています。
利益剰余金の赤字額が膨らんでおり、このまま赤字が続けば近い将来に債務超過に陥る可能性もあります。

決算末日 2020年9月30日 2021年9月30日 2022年9月30日 2023年9月30日
純利益 ▲1億6197万円 ▲2億7842万円
利益剰余金 ▲1億5891万円 ▲4億3734万円
総資産 10億0301万円 10億0335万円

斑尾ホスピタリティ合同会社

2022年夏、新たに設立された斑尾ホスピタリティ合同会社が、株式会社アビラから斑尾高原ホテルと斑尾高原スキー場などのリゾート事業及び施設管理事業に関する権利義務を承継しました。(令和4年 2022年8月30日付 官報 本紙 第807号 31頁)
同社の職務執行者は辻 隆 氏で、日本で2番目に多いスキー場を運用する株式会社クロスプロジェクトグループの代表取締役兼グループCEOです。
(補足)クロスプロジェクトグループのHPでは、斑尾高原は運営スキー場には含まれていません。

2023/2024 スキー場運営会社 トップ10 はこちら

File:Madarao Kogen Ski Resort (4483368693).jpg” by takaokun is licensed under CC BY 2.0.

斑尾高原スキー場買収時のインタビュー

(参考訳)

斑尾が外国人投資家に売却され、リゾートに大きな展望をもたらす

日本有数のパウダーエリアにある斑尾マウンテンリゾートが、シンガポールに拠点を置き、日本での観光・住宅資産の取得を専門とする不動産投資会社、Patience Capital Group(PCG)に売却されました。

この取引は、斑尾の2022/2023シーズン開始の数週間前、11月1日に完了しました。
同グループは、より多くの外国人スキーヤーをこのリゾートに誘致したいと考えており、時間をかけてリフト、レストラン、ホテルの改修などを検討しています。

PCGの投資管理責任者であるMatt Hoffmann氏は、Ski Asiaとのインタビューの中で、このリゾートの将来性と、同グループが斑尾をポートフォリオに適していると考えた理由について次のように語りました。
「新雪は、他に類を見ないほど素晴らしいものです。それがこのリゾートの大きな魅力です。この地域の利点のひとつは、東京から新幹線に飛び乗れば、1時間40分以内に飯山駅に到着できることです。これに勝るリゾートはほとんどないでしょう。」

斑尾の将来

Hoffmann氏は、今シーズンはあまり多くの変化を期待しないでほしい、1年目はリフトの状態を見極め、斑尾のプロモーション活動に利用すると語った。
その上で、あらゆることを検討するという。
「ホテル、飲食、リフト、、、すべてをよく見る」と彼は言った。
「ゲレンデ以外の時間も過ごしてもらえるように、ビレッジの中にもっといろいろなものを造りたい。山で2、3時間過ごした後、家族全員で降りてきて、おいしい食事をしたり、買い物をしたり、子供たちを楽しませたりできるようなアクティビティをもっと増やしたいのです。欧米化された人々に、すぐに大規模なアプレスキー文化が生まれるわけではありませんが、もう少し多くのものを提供する必要があると考えています。」

リゾートのネットワーク

斑尾の新オーナーは、日本で最も人気のあるリゾートに近いことも大きな魅力だと考えています。
Hoffmann氏は、ニセコユナイテッドやHakuba Valley(白馬バレー)のような大きなリゾートエリアに対抗するには、「地域統合」が最適だと考えていると明かし、リゾート間の移動を容易にする方法として、エリアリフト券を検討することを付け加えた。
「地域全体をもっとアピールすることに意味があるのかどうかを検討しているところです。スキーが得意な人なら、エリアの個々のスキー場は比較的小さいと思うので。」

サマーシーズン

Hoffmann氏は、斑尾が新しいゲストを惹きつけるために、グリーンシーズンをもっとアピールする必要があり、近くにある野尻湖の自然も生かしたいと考えている。
「スキー場には少なくとも2つの季節があると、誰もが言うだろう」と彼は言う。
「先週末、信越五岳トレイルランニングレースがありましたが、ランニング、サイクリング、グラベルライディングなど、もっといろいろなことをやってみたいですね。斑尾は、私が生まれる前から活気のあるリゾート地でしたし、成功した歴史があります。」

MADARAO SOLD TO FOREIGN INVESTORS WITH A BIG VISION FOR THE RESORT はこちら

 

妙高杉ノ原スキー場

妙高杉ノ原スキー場は、妙高山の南側山麓に広がる、高低差1,124m、最大滑走距離約8.5kmのロングランを楽しめるスキー場です。
2023年11月9日、西武ホールディングスは四半期決算実績概況資料の中で、妙高杉ノ原スキー場をPCGに譲渡し、スキー場の運営は引き続き、株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイドが行うと公表しました。

2024年3月期 第2四半期 決算実績概況資料 はこちら

 

今後の展開

2023年11月のブルームバーグのインタビューで、CEO/CIOのケン・チャンが次のように答えています。

この先数年で、約14億ドル(2080億円)を投じて、妙高をアスペン(米国)やウィスラー(カナダ)、サンモリッツ(スイス)と張り合える豪華なスキーの楽園に変えたい。
旅行客が東京から運転手付きの車で4時間、あるいは新幹線で2時間ほどかけてやってきて、この高級リゾート地に入り、冬にはリゾートの内外でスキーし、暖かい季節にはハイキングをしたり、子供たちをサマーキャンプに参加させたりする。
妙高の山々に世界的な高級ブランドの店舗や世界レベルのレストランが立ち並ぶ光景を思い描く自分のビジョンが成就するまでには、少なくとも3段階を経て、およそ10年と2100億円がかかるだろう。

PCGはこの2年間、周辺の土地を円安のおかげで安く買い進めてきました。
2026年までに、国際展開している高級ホテルや、その従業員のための住宅を建設することも目指しており、2023年12月までに、世界的な大手ホテルチェーン10社以上が参加した入札の落札者を、少なくとも2~3社発表する予定です。

 

2023/2024 スキー場の運営会社変更、名称変更、リフト新設など はこちら

コメント

  1. PCGの杉ノ原買収は、あまりにも大きな計画でびっくり
    斑尾のページに、ライムリゾート(元かんぽ)のspa画像が使われていた事で、PCGとの関係性を指摘された記述は興味深かったです
    ライムリゾートは隣の池の平スキー場オーナーの荒井アンドアソシエイツ(紀尾井町)が開設しましたが、政財界に繋がりのある荒井三ノ進会長は、JSAというコンサル会社の会長でもあり、社長に長くシンガポールに関わった廣岡さんがいますので、PCGのチャンさんとシンガポール繋がりで、杉ノ原と池の平が繋がるかもと推測してしまいます(安倍さんが一回目の総理大臣を離れたとき、池の平に来ていました)
    斑尾と杉ノ原の間にある野尻湖プリンス(エルボスコ/東海観光〜アゴーラ)も朽ち果てる前に復活するかもしれません
    杉ノ原はバブル期にゴンドラ乗場近くにプリンスホテル計画もありましたが、地元の反対で取り止めに 今では皆さん年取って「あの時賛成しておけば」と悔やむ人達も少なくありません
    実現しませんでしたが、かつての焼額〜苗場を繋ぐ計画とか、湯田中〜ごりん高原〜奥志賀を繋ぐ計画以来の久しぶりに楽しい話です
    クールシュヴェルを目指したアライは時代に歓迎されませんでしたが、杉ノ原はカナダのバンフ・レイクルイーズのようなマッタリとした雰囲気になって欲しいものです

  2. 妙高は、ニセコ、白馬の様に、現状を超えた更に世界的なリゾートになれるエリアだと思います。
    杉ノ原と池の平の連結は巨大化だけでなく、妙高に足りなかった、パンチの有るコースを追加出来、飽きさせないエリアになります。
    焼額山とごりん高原は、連結しても、つまらないだろうし。苗場とは荒唐無稽。
    妙高連結はリフト1本程度でも可能で、更に良いコースも増える。日本国内で最も現実性と効果が期待出きる場所だと思います。

    • 妙高は雪もいいし、エリアとして開発されれば、魅力が増しますね。
      スキー場間の連結、たのしみですね。

  3. 昨年のシーズン終わり頃に、松之山温泉スキー場でスノースクートの体験スクールに参加しましたが、とても操作しやすく自転車に乗るような感覚で初心者でもすぐに滑れるようになるいい道具だと感じました。しかし、国内スキー場ではあまり人気が出ていないようです。確かに、道具としては大型で運搬するのには難点があると思われ、キックボードのように軽量化しないと人気でないかもしれませんね。
    しかし、初心者でもすぐに滑れるという利点を生かしせば、例えば東南アジアからのスキー未体験者の呼び込みに使えるのではないかとも思います(インバウンドの開発)。
    また、従来のスキー・スノーボードはゲレンデでの滑りをメインに考えて来ましたが、新スノースクートでは、オフゲレンデでの楽しみ、例えばトレイル・スキーイング(森の小道を滑り降りる)みたいなアクティビティを開発できれば、ゲレンデも混雑せずスノーレジャー活性化できるかもしれません。