斑尾高原スキー場、シンガポールの投資会社が買収

スキー場 国内

2022年11月3日、日本・中国・韓国のスキー場情報誌SKI ASIAに、シンガポールのPatience Capital Group (ペイシャンス・キャピタル・グループ、以下PCG)が斑尾高原スキー場を買収し、長期的な視点で投資をしていくというインタビュー記事が載りました。

スポンサーリンク

インタビュー

(参考訳)

斑尾が外国人投資家に売却され、リゾートに大きな展望をもたらす

日本有数のパウダーエリアにある斑尾マウンテンリゾートが、シンガポールに拠点を置き、日本での観光・住宅資産の取得を専門とする不動産投資会社、Patience Capital Group(PCG)に売却されました。

この取引は、斑尾の2022/2023シーズン開始の数週間前、11月1日に完了しました。
同グループは、より多くの外国人スキーヤーをこのリゾートに誘致したいと考えており、時間をかけてリフト、レストラン、ホテルの改修などを検討しています。

PCGの投資管理責任者であるMatt Hoffmann氏は、Ski Asiaとのインタビューの中で、このリゾートの将来性と、同グループが斑尾をポートフォリオに適していると考えた理由について次のように語りました。
「新雪は、他に類を見ないほど素晴らしいものです。それがこのリゾートの大きな魅力です。この地域の利点のひとつは、東京から新幹線に飛び乗れば、1時間40分以内に飯山駅に到着できることです。これに勝るリゾートはほとんどないでしょう。」

斑尾の将来

Hoffmann氏は、今シーズンはあまり多くの変化を期待しないでほしい、1年目はリフトの状態を見極め、斑尾のプロモーション活動に利用すると語った。
その上で、あらゆることを検討するという。
「ホテル、飲食、リフト、、、すべてをよく見る」と彼は言った。
「ゲレンデ以外の時間も過ごしてもらえるように、ビレッジの中にもっといろいろなものを造りたい。山で2、3時間過ごした後、家族全員で降りてきて、おいしい食事をしたり、買い物をしたり、子供たちを楽しませたりできるようなアクティビティをもっと増やしたいのです。欧米化された人々に、すぐに大規模なアプレスキー文化が生まれるわけではありませんが、もう少し多くのものを提供する必要があると考えています。」

リゾートのネットワーク

斑尾の新オーナーは、日本で最も人気のあるリゾートに近いことも大きな魅力だと考えています。
Hoffmann氏は、ニセコユナイテッドやHakuba Valley(白馬バレー)のような大きなリゾートエリアに対抗するには、「地域統合」が最適だと考えていると明かし、リゾート間の移動を容易にする方法として、エリアリフト券を検討することを付け加えた。
「地域全体をもっとアピールすることに意味があるのかどうかを検討しているところです。スキーが得意な人なら、エリアの個々のスキー場は比較的小さいと思うので。」

サマーシーズン

Hoffmann氏は、斑尾が新しいゲストを惹きつけるために、グリーンシーズンをもっとアピールする必要があり、近くにある野尻湖の自然も生かしたいと考えている。
「スキー場には少なくとも2つの季節があると、誰もが言うだろう」と彼は言う。
「先週末、信越五岳トレイルランニングレースがありましたが、ランニング、サイクリング、グラベルライディングなど、もっといろいろなことをやってみたいですね。斑尾は、私が生まれる前から活気のあるリゾート地でしたし、成功した歴史があります。」

MADARAO SOLD TO FOREIGN INVESTORS WITH A BIG VISION FOR THE RESORT はこちら

スポンサーリンク

ペイシャンス・キャピタル・グループ

PCGは、先駆的な不動産投資会社を目指し2019年に設立され、シンガポール(本社)と東京の2拠点で活動し、世界中の機関投資家および個人投資家のために資産運用を行います。

ペイシェンス(Patience:忍耐)は、PCGが長期投資の運用にフォーカスし、投資パフォーマンスを最優先に考え、投資家に長期的に最高のリスク調整後リターンを生み出せるよう、たゆまない努力をすることを表しています。

運用ファンド

日本の観光特化型不動産第1号ファンド(JTF One)
日本国内の観光関連資産の取得に特化した一任型ファンド 2019年12月運用開始

記載はありませんが、同社のHPにライムリゾート妙高のSPAの写真が使われており、ファンドの物件の一つと考えられます。

日本レジデンシャル・オポチュニティ・ファンド(ASTRO)
東京都心部および首都圏の住宅資産の取得に特化した一任型ファンド 2020年11月運用開始

CEO

PCGの創設者であり、CEO、CIOのKen ChanはGICジャパン株式会社の前代表です。
GICとは、苗場スキー場などを買収したシンガポール政府投資公社(GIC Private Limited)のことです。

【考察】今後の展望、西武ホールディングス(プリンスホテル)のスキー場 はこちら

日本法人の決算公告

日本法人のペイシャンスキャピタルグループ株式会社の決算公告です。
売上額から考えると、投資はシンガポール本社が行い、日本法人は施設の運用管理業務のみを行っているのかもしれません。

単位:千円

決算末日2020年03月31日2021年03月31日2022年03月31日
総資産19,00083,00095,000
負債8,00036,00022,000
株主資本11,00046,00073,000
(うち当期純利益)(1,000)(35,000)(26,000)

斑尾高原スキー場

斑尾高原スキー場は株式会社アビラが運営していますが、その親会社を調べることはできませんでした。
株式会社アビラの社長の松下宏之氏は、(2021年2月26日時点で)安比高原を運営する株式会社岩手ホテルアンドリゾートの役員でもあります。
また、株式会社岩手ホテルアンドリゾートの親会社はShanghe Limited(香港)/Qiandao Limited(英バージン諸島)/Shang Xie Limited(英バージン諸島)/創進国際投資有限公司(香港)/True Harmonic Group Limited(サモア)で、Qiandao Limitedには海外投資家が80%投資しています。
今回の件は、アビラから斑尾スキー場を買収した可能性と、アビラ自体を買収した可能性がありますが、SPCが投資会社と言うことを考慮すると後者のような気がします。

株式会社アビラ

ここ数年、大変厳しい経営状況が続き赤字が拡大しています。

運営施設

ネットで見つけることができた施設のみなので、他にも所有している可能性があります。

  • 斑尾高原スキー場
  • 斑尾高原ホテル
  • ANA クラウンプラザホテル秋田(運営受託契約)
決算公告

2019/20シーズンの小雪、2020/21シーズンの新型コロナウイルスの影響で赤字が拡大しています。
ホテルの営業もあるので、単純には比較できませんが、斑尾高原スキー場利用者数から考えると2022年9月30日の決算も2億円近い赤字であったと考えられます。
利益剰余金の赤字額が膨らんでおり、このまま赤字が続けば近い将来に債務超過に陥る可能性もあります。

単位:千円

決算末日2020年9月30日2021年9月30日2022年9月30日
総資産1,003,0151,003,352
負債561,421840,183
株主資本441,594163,169
(うち当期純損失)(▲161,972)(▲278,425)
斑尾高原スキー場(参考)  
シーズン2019/20202020/20212021/2020
利用者数147,524人81,137人125,883人

File:Madarao Kogen Ski Resort (4483368693).jpg” by takaokun is licensed under CC BY 2.0.

 

2022/2023 スキー場の運営会社変更、名称変更、リフト新設など はこちら

コメント