利用者5万人では火の車、廃業したセントメリースキー場

スキー場 国内

2024年3月3日(日)、その歴史に幕を下ろしたみやぎ蔵王セントメリースキー場。
宮城県川崎町のHP内にある「町長の部屋」にて、4月~6月にかけて3回に渡り、スキー場と町とのかかわりが綴られていたので、文意を損なわないように切り出し、時系列に並び替えました。

原文はこちらでご覧いただけます。

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みやぎ蔵王セントメリースキー場

宮城県川崎市にあったセントメリースキー場は、リフトが高速道路の高架下を通ることでも有名なスキー場でした。
スキー場は、ゲレンデ、センターハウス等の建物、4つの駐車場などからなり、52万6400平方メートルの土地うち町有地は20%、国有林が10%、民有地が70%(34人と1法人)です。

利用者数

開業当初は15万人を超える利用者を集めていましたが、スキーバブルの終焉と共に急激に利用者を減らし、その後5万人前後で推移していました。

経費

川崎町は、利用者が激減した後の平成11年にスキー場を3億円で買い取り、その後、17憶4,400万円の税金を投入して維持を行っていました。
資料を見る限り、スキー場を買い取った後は一度も黒字となることがなく、またリフトの更新費用の積み立ても行っていなかったようです。

 

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買収交渉

35年前、スキー場は三井物産ら4社と川崎町が第三セクターを設立してオープン。
売上高は、初年度が3億3000万円、4年目も5億3000万円と順調に推移。
しかし、その後3年間は、雪不足による営業日数の短縮で利用客が伸び悩み、来場者数は、平成7年の16万人を最高に減少傾向。
平成10年のシーズンまでの累積赤字は24億8000万円。

年間の入込数が10万人を割ったのは平成8年。
平成10年6月には、三井物産が川崎町に撤退を通告。
町に経営の引き継ぎと施設の買い取りを要望。
当時の佐藤昭光町長は、「22億円で買ってくれとの打診に、10カ月かけて5億円までに交渉した」と。
しかし、時を同じくして議会では、スキー場調査特別委員会が、5カ月間に9回の調査や依頼した公認会計士の出席、説明を求めた後、「町が営業権を譲り受けることには反対」という審査結果を出すにいたります。

特別委員会が審査結果を出してから1カ月後の平成11年5月、寛野秀雄氏が町長に就任。
6月にはオニコウベスキー場や白石スキー場が無償譲渡されます。
6月25日、寛野町長は取得費5億2000万円の予算案を提出しますが、賛成8、反対11で否決。
その後、様々な動きを経て、9月24日、町が3億円で資産と営業権を買い取ることを議会で可決。

買い取りを要望されてから1年3カ月。2人の町長は、様々な交渉を続けました。議会は、様々な勉強をし、意見交換を続けました。
町営化反対の町会議員の主張は、「大企業が撤退するのに、経営がうまくいくはずがない。赤字になって町の財政を圧迫するに決まっている」。
賛成の議員は、「冬場の雇用の機会を失ってはいけないし、スキー場が撤退すれば町のイメージダウン」。

 

閉鎖

20年前、平成16年9月議会、3年続けて、多額の予算がスキー場に投入されるとあって、議会は紛糾。
町長がスキー場特別委員会の設置を自ら提言して理解を得ますが、3カ月後、9項目の手続きが必要で時期尚早と提言を自ら反故(ほご)にしました。
平成20年夏、議会はスキー場を維持していく費用が膨大になることを危惧。
スキー場の経営から撤退した場合、リフト・建物等の解体とゲレンデ法のり面めん復旧の一連の費用を算出するよう町側に要請します。
算出された金額は、約9億7400万円。

スキー場を存続すべきか、存続に賛成8、反対5。スキー場の存続が決定しますが、10億円近い閉鎖の場合の費用の目途が立たないことが賛成の理由でもあったようです。

町がスキー場を買ってから24シーズン、17億円以上の予算を投入してきました。
この10年で9億円を超す金額です。
「予算を投入したからやめられない。予算がかかるからやめられない」ではなく、決断が必要でした。
1月18日の議会では、様々な意見を承りましたが、全会一致で撤退を前提に、3月まで営業するための補助金として4400万円を認めていただきました。

私は、川崎町の町長として、川崎町が保有している「みやぎ蔵王セントメリースキー場」を今シーズン限り、3月いっぱいで閉鎖することを決断しました。
温暖化による雪不足、スキー人口の減少、そして、老朽化が進む設備の維持管理費の増加が予想される中、これまで運営してくださった関係者の方々の思いと努力だけでは、いかんともしがたい、と現実を踏まえての決断です。

 

最後に

令和10年3月まで地権者と借地契約をしており、スキー場の跡地の活用方法について議論が行われています。
国からの借金は3億円で、活用方法によっては強制的に返済せねばならない可能性が大きいそうです。

一般企業が撤退を決断した事業を自治体が引き継いだわけですが、自治体所有のスキー場は、無限にとまではいきませんが多くの税金を投入して延命が可能です。
日本のスキー場の半数以上は自治体が所有しており、このような問題が随所で顕在化しています。

バブル期に比べスキー・スノーボード人口は減少したとはいえ、それでも毎年500万人以上が楽しむ人気の高いスポーツです。
スキー場は決して斜陽産業ではなく、過当競争(スキー場の数が需要より多い)が続いているだけで、適正な数になれば利益がでると思います。
民営のスキー場は、税金の投入無しで頑張っています。
自治体の正しい判断を期待しています。

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