2021年7月16日、各紙一斉に、西武ホールディングスがスキー場などを含む約40施設を1000億円超で売却する話を、投資ファンドなどと行っていると報じました。
その後、2022年2月10日に、株式会社西武ホールディングスより、6か所のスキー場を含む31施設を、シンガポール政府投資公社(GIC Private Limited)の関係会社である Reco Pine Private Limitedに約1500億円で売却すると発表がありました。
また、取引の予定は次の通りです。
- 2022年2月10日 :基本協定書の締結
- 2022年5月(予定):ホテル・レジャー資産に係る売買契約の締結
- 2022年9月(予定):上記売買契約に基づく資産譲渡の実行日
当社グループのホテル・レジャー事業の一部資産に関する GIC との基本協定書締結のお知らせ はこちら
西武ホールディングス所有のスキー場
西武ホールディングス傘下の企業のうち、(株)プリンスホテルと西武鉄道(株)が国内外にスキー場を所有しています。
新型コロナウィルスの影響を受ける前の2018/19シーズンは、苗場が約70万人、かぐらが約36万人、軽井沢が約34万人と、運営スキー場合計の利用者数は国内1位でした。
また、プリンスホテルはスキー場とホテルを一体運営し、その数は9か所になり、国内3位のスキー場運営企業です。
今回、売却が決まったスキー場は次の6か所で、スキー場に隣接するプリンスホテル、ゴルフ場なども対象に含まれています。
(株)プリンスホテル 所有のスキー場
- 富良野スキー場
- 雫石スキー場(売却予定)
- 苗場スキー場(売却予定)
- かぐらスキー場(売却予定)
- 六日町八海山スキー場(売却予定)
- 妙高杉ノ原スキー場
- 万座温泉スキー場(売却予定)
- 志賀高原 焼額山スキー場(売却予定)
- 軽井沢プリンスホテルスキー場
- 松花湖スキー場(中国)
西武鉄道(株) 所有のスキー場
- 狭山スキー場
西武グループ中期経営計画(2021~2023 年度)
今回の資産売却報道に先立ち、2021年5月13日に、西武グループ中期経営計画(2021~2023 年度)において、スキー場を含む保有資産のアセットライト化を行うと発表をしています。
具体的には、プリンスホテルが所有しているスキー場などの資産を流動化(売却など)を行い、運営は同社が引き続き行うというものです。
また、傘下の企業を再編成し、プリンスホテルが所有している資産(土地・建物等)及び資産管理機能を西武プロパティーズへ移管し、「新 株式会社プリンスホテル」は、運営に特化するとあります。
「新 株式会社西武プロパティーズ」が保有する資産は、基本、再開発を予定してい不動産のみで、アセットライト化の対象施設は年内をめどに確定する予定です。
西武グループ中期経営計画(2021~2023 年度) はこちら
スキー場の簿価
企業が所有する固定資産には、取得金額から減価償却費を控除した簿価(帳簿上の価値)が存在します。
2021年3月31日を期限とする有価証券報告書によると、6か所のスキー場を含む施設の簿価が載っていました。
簿価の高いものから記載を行うので、他のスキー場を含む施設の簿価は、これらより少ないことになります。
実際の売買額とは別物ですが、簿価からみると約40施設で1000億円超、すなわち平均25億円/施設という売却額は妥当に見えます。
簿価:約387億円
- 軽井沢プリンスホテルスキー場
- ザ・プリンス 軽井沢
- ザ・プリンス ヴィラ軽井沢
- 軽井沢プリンスホテルイースト
- 軽井沢プリンスホテルウエスト
- 軽井沢プリンスホテルゴルフコース
- 晴山ゴルフ場
簿価:約215億円
- メットライフドーム(狭山スキー場が含まれます)
簿価:約116億円
- 苗場スキー場
- かぐらスキー場
- 苗場プリンスホテル
簿価:約61億円
- 富良野スキー場
- 富良野プリンスホテル
- 新富良野プリンスホテル
- 富良野ゴルフコース
簿価:約17億円
- 志賀高原焼額山スキー場
- 志賀高原プリンスホテル
シンガポール政府投資公社(GIC Private Limited)
GIC Private Limitedは、旧名称がGovernment of Singapore Investment Corporationから分かるようにシンガポール政府の投資会社で、1981年に設立されています。
運用資産は2021年8月時点で、USD 744 billion(約86兆円)の世界有数の投資会社です。
全資産の約8%が不動産で、長期運用を行うことで知られています。
日本への主な投資
- 1996年:汐留シティセンター(東京都)
- 2007年:複合商業施設ホークスタウン(福岡県)
- 2008年:ウェスティンホテル東京(東京都)
今後の展望
アセットライト化は、経営体力がある企業が負債の圧縮や手元資金を増やすために行う手法で、特別珍しいことではありません。
ただ、西武ホールディングスは2020年度決算で723億円の赤字を出していて、経営状況が芳しくないことは間違いありません。
今回のアセットライト化により、スキー場の所有者はGICになりますが、株式会社西武プリンスホテルズワールドワイドが運営業務、株式会社西武SCCATがビルマネジメントを業務受託する予定です。
地方自治体が、所有するスキー場の運営を指定管理者に委託することと同じスキームです。
また、GICは賃貸収入を見込んでいるわけなく、長期運用によって投資資金の回収を行うので、短期間でスキー場を廃止する可能性は低いと思われます。
ただ、少し心配なのが、妙高杉ノ原スキー場です。
売却対象に含まれておらず、かといって富良野や軽井沢のように西武グループの再開発対象にも(たぶん)含まれていません。
どうなるのでしょうか。
最後に
スキーと言えば「苗プリ」、という青春時代を過ごした私にとってはせつない話です。
スキー場の存続を願ってやみません。
2021/2022 閉鎖する(かもしれない)スキー場 はこちら
コメント
5年毎にどうなるのかドキドキしないといけなくなっちゃうんですね。。。涙
苗場プリンスホテルはフジロックを前に職域接種の会場になってる。なんてこちらの地方ニュースでは流れてましたが。。。
観光や飲食の商売は会社が大きくても、小さくても苦難ですね。。。涙
今回は、団体客が多かったところの被害が大きく、手の打ちようがなかったです(>_<) 早く普通の生活に戻ってほしいです。
私も早く普通の生活(冬)が戻って来て欲しいです。。。笑
まとわりつく様な暑い空気なんてもう嫌!
あのキレの良い冷たい空気に当りたい。。。
ずっとマスクしていると、人間は呼吸でも放熱している事が良くわかります。。。涙