寒波の話題をよく聞くようになったので、むか~し、むかしカナダのレイクルイーズで経験した寒~い話です。
気温が下がってくると、手先、足先など体の末端に血が通わなくなり感覚が無くなってきます。
本当に危険な状態なので、そのような状態では決して滑ってはいけません。
と、言いながら零下30℃を下回る気温で何回も滑ったことがある私が凍える話をさせていただきます。
零下30℃のスキー場
実は私、はるか昔ですが、カナダでスキーガイドをしていました。
スキーガイドとは、ホテルのチェックイン、チェックアウトのお手伝いや、スキー場をガイドをしながら一緒に滑る人です。
零下30℃、その恐ろしい寒さはレイク ルイーズ スキー場での体験しました。
レイクルイーズはカナディアンロッキーの中に位置する街で、寒波がくると一日で終わることはなく1週間、2週間と続きます。
零下30℃ともなると、ゲレンデに立った瞬間、いやホテルの玄関にやばいと感じます。
フェイスマスク、ネックチューブ、完全装備をしていても、凍傷は避けられません。
そんな気温の時、もちろん地元の人は滑りません。
しかし、はるばる日本から来たスキーヤーの方は、そのような状況の中でも滑るのでガイドをさせていただきます。
(当時、私のガイドをしたお客様にスノーボーダーはおられませんでした。)
楽しみにしていた海外スキー、滑りたい気持ちはよく分かります。
でもね、本当に寒いんです。
私が一番注意していたことは、女性のイヤリングです。
どんなにいやがっても、説得して絶対に外していただきました。
どうしてかって?
帽子などで保護をしていても凍傷になり、耳たぶが倍以上に膨れ上がります。
誇張は一切ないです。
零下30℃とは、そういう寒さです。
“Lake Louise_106” by kyle w lane is licensed under CC BY-NC-ND 2.0
スキーガイド
私は、シャトー レイク ルーズという、カナディアンロッキーで最も有名なホテルに宿泊されているお客様を、レイク ルイーズ スキー場でガイドする担当でした。
ホテルからスキー場まではシャトルバスを利用し、事前にリフト券は購入済で、ゲレンデに着くとそのままリフト乗り場に向かいます。
海外スキーに来る方々なので、上手い方がほとんです。
滑りたくうずうずしているのがよく分かります。
しかし、リフトを降りた後、ゲレンデを案内する風を装い、レストランがある方向に滑っていきます。
そこで、休憩するかどうかを聞きます。
リフトと滑っている時間併せて、20~30分ぐらいだと思います。
私の経験では100%、みなさん、そのままレストランに入ります。
そこでは、ブーツを脱いでもらいます。
なぜかって?
それは、ブーツを脱いで指先を温めないと、感覚が戻らないからです。
指先に血が通ってくると、やっとどのくらいの寒さだったのか実感できます。
そのまま、1時間ぐらいは休憩です。
そうはいっても、日本からわざわざカナダまで来ているので、滑りたくてうずうずされています。
次の1本を滑って、また1時間休憩です。
零下30度のスキー場そんな感じです。
よく当たる天気予報
北米大陸の天気予報は大変良く当たります。
前線は西から東に移動し、いつ雪が降るか予想が容易です。
カナディアンロッキー山脈の中にあるレイクルイーズは、ベースで1,645m 頂上で2,636mと標高も高く大変寒い場所なのですが、降雪量はあまり多くありません。
しかし、最高気温が氷点下の日が数か月続くので雪質は最高です。
雪が降ると暖かい?
地元民のあいだでは、「今日は雪が降って暖かいね。」というあいさつがかわされます。
「?」ですよね。
日本では、「雪が降る=寒い」ですよね。
しかし、雪は暖かい日(零下10℃ぐらい)でしか降りません。
雪が降らない、すなわち晴れた日が続くと日増しに気温が下がっていき、零下30℃を下回ります。
正確な温度は覚えていませんが、当時は零下30数℃になるとスキー場が営業中止になっていました。
もちろん、営業中止の日も経験しました。
気温の下がり方
カナディアンロッキーとはいえ、零下30度を下回るのは年に数回なので、数日前から話題に上り始めます。
なぜ、予想がつくかというと、気温の下がり方に特徴があります。
このような低温は快晴無風の日が続くと起こります。
放射冷却で冷えた冷気が谷底にたまり、冷たい空気は暖かい空気より重いので、谷底から動きません。
次の日も放射冷却が起こり、また気温が下がります。
日増しに、最低気温が下がっていくのがよく分かります。
また、レイクルイーズは海岸から約800kmあり、加えて前線は海上で発生するので、到達するまでに数日かかります。
なので、どこまで気温が下がるのか予測ができるのです。
北米大陸の平野部では、下の写真のようにはっきりと前線を見ることができます。
“Divided Skys” by caribb is licensed under CC BY-NC-ND 2.0
後日談
ガイドをしているときは、お客様が凍傷にかからないように、細心の注意を払ってアドバイス(誘導)します。
しかし、2日目からは自由行動です。
危険なことはお伝えしますが、行動はお客様自身で決められます。
次にお会いするのは、緊急連絡がない限りチェックアウトの時です。
先日、イヤリングのお話をしましたが、外さずに滑られたお客様がおられ、耳たぶが倍以上に膨れ上がり、かつ紫色に変色していました。
日本に帰られ病院に行かれたと思いますが、回復することをお祈りするばかりです。
日本でも零下20℃程度にはなることはありますので、十分気を付けてスキー、スノーボードをお楽しみください。
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