継続も地獄、廃止も地獄、開田高原マイアスキー場と木曽福島スキー場

スキー場 国内

長野県木曽町が運営する開田高原マイアスキー場、木曽福島スキー場、御岳ロープウェイについて、「木曽町スキー場等あり方検討委員会」からの協議結果報告を受け、町は2019年8月22日付で「スキー場等索道事業の施設設備等に関する町の方針」を定めました。

その方針に則り、開田高原マイアスキー場と御岳ロープウェイは引き続きアスモグループ株式会社が運営(指定管理)を行い、木曽福島スキー場の運営は株式会社nationが行うことに。

しかし、2022年7月、アスモグループが、開田高原マイアスキー場の指定管理を2022年7月31日、御岳ロープウェイの指定管理を11月15日をもって解除することを町に申し出ました。

7月20日、町は両施設の指定管理者、あるいは譲渡希望者の募集を開始。
8月19日までに、精密加工業の豊実精工株式会社が開田高原マイアスキー場の条件付き無償譲渡の申し出を行い、9月15日の町議会で承認されました。

2023年11月9日、アスモグループは裁判所から破産手続きの開始決定を受けました。
負債はおよそ3億4500万円で、木曽町から3億2500万円余りを貸し付けていましたが、回収は難しそうです。

2023年11月28日更新

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スキー場の現状

長野県木曽町

木曽町は、長野県木曽地方、岐阜県と県境を接する人口約1万人の町で、2005年11月1日に木曽福島町、日義村、開田村、三岳村が合併して誕生しました。
旧開田村に開田高原マイアスキー場と木曽福島スキー場、旧三岳村に旧御岳ロープウェイスキー場(現在は夏営業のみ)があります。
県境には、標高 3,067 m の御嶽山(おんたけさん)がそびえます。

スキー場利用者数

利用者数の漸減傾向が続いています。
他の多くのスキー場と同様な傾向ですが、木曽福島スキー場が落ち込みが激しいようです。
2019/20シーズン以降の個別のスキー場の利用者数は分かりませんが、両スキー場合わせて8~9万と少し盛り返しているようです。

報道によると、2022/2023シーズンの開田高原マイアスキー場の利用者数は1万5千人まで落ち込んでいます。

指定管理者の営業収支

指定管理者の損益計算書によると、御岳山の噴火以降、3施設合わせて毎年約1億円の赤字が続いています。

アスモグループ株式会社 経常利益

  期間 経常利益(赤字)
第15期 2014年10月~2015年9月 ▲  9,374万円
第16期 2015年10月~2016年9月 ▲  7,422万円
第17期 2016年10月~2017年9月 ▲  5,866万円
第18期 2017年10月~2018年9月 ▲10,801万円
第19期 2018年10月~2019年9月 ▲  9,900万円

指定管理料は特別利益として計上されており、経常利益(営業収支)には含まれていません。

 

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町の方針

木曽町スキー場等あり方検討委員会の協議結果報告書

「木曽町スキー場等あり方検討委員会」から出された協議結果報告書の概要です。

  • 施設を現状のまま存続するべきと考える委員は少数
  • 運営する期限を設けるべきとの意見が大多数
  • 今後5年、平均2億2,000万円/年の公費負担について減らすべきと考える委員が大多数
  • 3施設を同一の指定管理者でなく、施設を分けて担わせるべきであるという意見が多くあり

スキー場等索道事業の施設設備等に関する町の方針

協議結果報告を受け、スキー場等索道事業の施設設備等に関する町の方針が決定。

  • 木曽福島スキー場は、株式会社nationが管理を行う

町が行う支援の概要です。(全て3施設合わせた額)

  • 上限を3,500万円/年度とし指定管理料を2021年度まで支払う
    (後日、スキー場等索道施設指定管理者に対する町の支援ルール(令和4年2月24日改訂)にて、指定管理料の継続を決定)
  • 1億円/年度を目途として整備を行う
  • スキー場の敷地地代は町が負担(約1,300万円)
  • 突発的、緊急的で安全管理上やむを得ない整備費用が発生した場合は両者協議のうえ対応する
  • 今後新たに「スキー場等運営基金」の積み増しは行わない
    (運営基金とは、もともとアスモグループ株式会社が所有していた1億8,100万円の基金を町が引継ぎ、同会社に対して貸し付けをしてきました。しかし、2016年度末に基金が枯渇したため、2018、2019年度に町費より合計2億円の積み増しを行った)
  • このルールに基づく町からの支援は、2023年度を限度とする

設備維持料、廃止時の費用

運営を続けるにあたり、リフトなどの維持管理が必要になり、継続し続ける場合と8年後に廃止する場合の2019-2026年の費用が試算されています。
また、廃止した場合、国に返却するにあたりリフト等の構造物の撤去はもちろん、跡地に植林を行い森に戻す必要があります。
継続する場合、約2億5,000万円/年の整備費と、単年の営業収支の赤字分を負担することになります。

  整備計画   廃止費用
運営条件 継続 8年で廃止 リフト撤去後、植林
期間 2019-2026年分 2019-2026年 廃止後20年間
木曽福島スキー場 10億6730万円 6億2480万円 5億8940万円
開田高原マイアスキー場 9億1760万円 7億3260万円 10億0529万円

経済波及効果

報告書には、各スキー場からもたらされる経済効果についての試算があります。
具体的には、町内で支払われる宿泊費、飲食費、お土産代などから波及する効果についてです。
町民の雇用確保に繋がる部分なので、町としては考慮する必要がありますが、数字自体の取り扱いが難しいので割愛します。

 

指定管理者

アスモグループの撤退

このような厳しい経営状況の中、アスモグループ株式会社が、開田高原マイアスキー場の指定管理を2022年7月31日、御岳ロープウェイの指定管理を11月15日をもって解除することを町に申し出、認められました。
新たな運営先が見つからなければ、従業員は解雇すると伝えているそうです。
スキー場の営業に向けて準備を始める時期に指定管理者の募集を始めなければならず、大変なことになっています。

その後、2023年11月9日、アスモグループは裁判所から破産手続きの開始決定を受けました。
負債はおよそ3億4500万円で、木曽町から3億2500万円余りを貸し付けていましたが、回収は難しそうです。

指定管理者、あるいは譲渡希望者募集

2022年7月20日、町は両施設の指定管理者、あるいは譲渡希望者の募集を開始しました。
特に明記はありませんでしたが、指定管理者と譲渡希望者の両方が現れた場合、譲渡希望者を優先するのではないでしょうか。

開田高原マイアスキー場の指定管理者と譲渡希望者募集についてです。

指定管理者募集要項

スケジュール

  • 募集期間:2022年7月20日(水)〜 8月19日(金)
  • ヒアリングの開催        :2022年8月下旬
  • 譲渡事業者の仮決定       :2022年8月下旬
  • 譲渡事業者の本決定(議会の議決):2022年9月
  • 譲渡事業者との譲渡契約締結   :2022年9月議会議決後

施設利用料

  • 1期目は免除
  • 2期目以降は収益の5%

指定管理料

  • 2022年度  :明記無し。11,666,666円 x (指定管理日数)/365日でしょうか
  • 2023年度  :11,666,666円
  • 2024年度以降:町が新たな支援ルールを定める

民間への施設譲渡に係る事業者等募集要項

スケジュール

  • 募集期間:2022年7月20日(水)〜 8月19日(金)
  • ヒアリングの開催       :2022年8月下旬
  • 指定管理者選定委員会の開催  :2022年8月
  • 指定管理者の決定(議会の議決):2022年9月
  • 指定管理者との本協定締結   :2022年9月議会議決後
  • 指定管理者による業務開始   :2022年9月議会議決後

譲渡額

  • 無償

対象施設

  • スキー場関連施設(管理棟、レストラン、従業員宿舎、リフトなど)
  • 上記に付属する備品(除くリース品)

主な譲渡条件

  • 譲渡後10年間は施設の転売や事業譲渡は行わないこと。
  • 譲渡後、事業を廃止する場合は施設を除却した上で貸付土地を返還すること
  • 貸付期間及び土地使用料は譲渡契約締結時に協議の上、決定する
  • 活用内容が年間を通して地元への経済波及効果の高い事業内容であること
    (特に施設周辺の宿泊事業者の利用者増に効果のある事業内容であること)

無償譲渡の応募者

岐阜県富加町で精密加工業を営む豊実精工株式会社が、初期メンテナンス費の補助等の条件付きで、無償譲渡に応募し、9月15日の町議会に関連議案が可決されました。

 

考察

3施設で3,500万円/年(上限)とする、指定管理料の支払いが2021年度で終了としていましたが、一転継続が決定しました。(継続期間の明記無し)

しかし、2023年度をもって次の支援が無くなります。

  • 1億円/年度を目途としてた施設整備費
  • スキー場の敷地地代(約1,300万円)
  • 突発的、緊急的で安全管理上やむを得ない整備費用(発生した場合、両者協議のうえ)

直近2年間の営業収支の公表はありませんが、スキー場等の利用者が著しく伸びているわけではないので、黒字となっている可能性は少ないと思います。
そうすると、2024年度からはスキー場との敷地代、整備費が発生することとなり、単純に合計すると3施設で1億1,300万円の支出が増えることになります。
すなわち、現在の1億円の赤字を解消したうえで、1億1,300万円の支出に耐えうる収入が無いと会社を存続させることが難しいということです。

上記は3施設合わせての額なので個々の施設については分かりませんが、各施設の規模から考えるとだいたい3等分されるのではいでしょうか。

 

高速道路から見放された御嶽山麓のスキー場、御嶽スキー場(おんたけ2240)、開田高原マイア はこちら

コメント

  1. ただ,単体で赤字だからとスキー場を廃止すると,他に観光資源が無ければ,冬の間全く,外から人が入って来なくなるんですよね。
    そうすると,ホテル・旅館はもとより,スーパーやコンビニ,ガソリンスタンドなど,かなりの商売が成り立たなくなってしまう。
    それで宿やお店などが無くなってしまうと,夏場の登山やゴルフ客も入って来なくなる。
    そういう意味では,運営が赤字とか,廃止すると原状回復費用が高額といった部分だけでなく,経済波及効果が実際どうなのか,という部分の考察が,最も大事なのかもしれません。

    • おっしゃる通りだと思います。
      レポートでは、経済波及効果についても細かく試算されています。
      一方、日本全体で見た場合、今のスキー場の数を維持することは大変困難だと思います。すなわち、今のままでは状況が好転する可能性はほとんどないということです。
      自治体として考えなければいけないのは、このまま赤字の補填を続けるか、その額を他の雇用を生む政策に振り向けるかの決断をすることです。少なくともこの問題に最も詳しいであろう検討委員会は、今のままでの継続は望ましくないと考えているようです。

  2. 大手民間の運営会社は別の季節産業と従業員をうまく融通してるみたいで、スキー場の営業期間が終わったらゴルフ場で仕事って方もいらっしゃる様です。
    「食堂のあの人ゴルフ場の食堂にいた」とか。
    指定管理者に手を上げる側の都合も十分考慮願いたいです。
    指定管理者も、管理している別のスキー場をシーズン券の割引特典にしたり、共通化して魅力を増したり、融通して効率上げるなど努力させているのを拝見します。

    雪あり県民として思う事ですが
    紅葉が終わって寒くなると近所の公園から子供たちが居なくなります。
    ネズミ色の空、晴れていても湿った地面に遊具です。
    スキー場はそんな子供たちがスキーやスノーボードだけでなく、そり遊びをする場でもあります。
    廃業になったあのスキー場で練習していたレーサーの子たちは、どこで練習してるのだろうか?。。。涙

    匿名さんのおっしゃる通りで、不便になってしまったら、若い人は居なくなり、田んぼや畑も。。。涙
    悪循環にならなきゃ良いけど。

    • 悲しいかな、バブルの絶頂期にスキー場を造ったので、今の利用客では全く採算が合わないと思います。
      正確には分かりませんが、1割、2割利用者が増えても、全スキー場が生き残れるほどの需要ではないでしょう。
      一方、新潟レジャースキーヤーさんが心配されている通り、地域に根付いたスキー場も必要だと思います。
      北海道のローカルスキー場のように公園の一部として自治体が運営するなど、今と違う形で雪と触れ合う場所が必要だと思います。

  3. つい先日、木曽福島スキー場に行ってきました。駐車場に着いた時、正直別のところにしようかなと迷ったぐらい寂れてて、客もまばら…。でもいざ滑り出すと…良かったですね〜!整備は丁寧、雪質なかなか、コースは多彩ではなくとも飽きさせない中斜面で、スタッフの対応も気持ちよく、ものすごい満足感のなかスキーを満喫しました。
    運営大変でしょうが、私達もご飯や温泉で多少のお金は落とします。来年もぜひお邪魔したいです。

    • スタッフがしっかりしているスキー場は気持ちいいですよね。
      全てのスキー場を救うことはできないので、自分のお気に入りに通うのがスノーヤーのできることですね。

  4. 兵庫在住です。日帰りで雪質、コース、規模は我慢の地元スキー場にハイシーズンは行ってます。12月初旬、3月以降は奥伊吹、高鷲エリアに関西人(岐阜・愛知も)は流れます。奥伊吹はコース、雪質、インターから距離とも✖。イベント企画いろいろ上手!それが全て。ヨーク観察すると!初中級者の割合が他のスキー場に比べ圧倒的に多いです。たぶん一人で来場の割合は全国でももっとも少ないのでは。高鷲エリアは雪質✖、土日混雑。ボード若者多し。食事✖。車中泊で楽し。インターアクセス〇で関西圏から日帰り可。
    木曽エリアは雪質〇コース〇コスパ〇混雑少なし〇。御岳噴火と遠いイメージと宣伝へた。中津川インターと19号線快適さアピールすべき(西宮から高鷲までと距離変わらず)
    そこで提案です。地元のメンバーでユーチューバーやってみては!(既に有名なスノーYouTubeともコラボして)
    ①早朝着!日帰り湯!定食うまし!夜中帰阪で高速3割引!②八方、志賀、野沢行き帰りに木曽エリアスキー場経由、中津川インター利用③中央エリアとのコラボとか
    いろいろ提案できるのでは YouTubeからコストかけず 滑走アピールより<行き方プラン!!かと。
    いろいろぐだぐだひまなので書きました。関西人としては信州に滑りに行きたいけど東京に比べて圧倒的に遠い!高い! 中津川からあとの高速難所!疲れる。夜中なら19号線、トラック多いけど快適、道の駅車泊も〇。
    木曽エリアスキー場互いに協力してアピールできれば白馬、志賀の客を途中で引き込むことは絶対可能と思うけどなー 私は白馬方面行くときも必ず中津川で降ります。

    • sayoppe2さん、関西の方の見方を聞かせていただき、ありがとうございます。
      地理的条件を考えると、中京圏、関西圏にアピールする必要がありますね。
      どこのスキー場もそうですが、アピールの仕方をもっと考える必要がありそうです。

  5. スキー大好きです
    行きます
    頑張ってほしいです
    生き甲斐なので!