高騰するアルバイト料、定休日の設定、リフトの運休!! 人手不足に悩むスキー場の現状

スキー場 国内

近年、全国各地のスキー場でアルバイト不足が常態化し、ついに営業中止に追い込まれるスキー場もでてきました。
アルバイトを集めるために首都圏より高い時給を設定する、少ない人員で営業を行うために定休日の設定やリフトの運休を行うなど、生き残りのためにスキー場は対策に追われています。

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アルバイト不足

スキー場でのアルバイト不足は深刻です。
ついに、アルバイト不足が原因で営業中止を行うスキー場がでました。

津黒高原スキー場

報道によると、リフト運行に必要な技術管理者の確保ができず、今シーズンの営業中止を決定しました。
来期以降の営業も未定です。

国境スノーパーク

人手不足により、今シーズンの営業を中止しました。
HPが、トップページを除く削除されていることが不安です。

 

次に、昨シーズンの状況を何件かご紹介します。

蔵王温泉スキー場

蔵王温泉スキー場では、シーズン真っ最中にもかかわらず、人手不足によって平日に一部のリフトの運行を休止せざるをえない状況が続きました。
シーズンに入り新たに10人ほど採用できたものの、途中で辞めた人もいて、すべてのリフトを毎日動かすためには、7人ほど足りない状況でした。

ガーラ湯沢スキー場

リフト係が集まらず、ゴンドラとリフトを稼働させることが1か月以上できませんでした。
例年であれば年末年始に、石打丸山スキー場と連絡するリフト「バギー」と、湯沢高原スキー場と連絡するゴンドラ「ランドー」の運行を開始します。
しかし、人手不足により、バギーの運行は2月3日(金)、ランドーの運行は2月11日(土)からでした。

志賀高原 熊の湯スキー場

リフト係が足りず、パトロールが応援に行っていますが、パトロールの残業が増えて困っていると語っています。
また、コロナの影響で修学旅行が無くなり、インストラクターを減らしていたが、その間に他の職業につかれたため、修学旅行が復活してもスクールにインストラクターが戻ってこないそうです。

(補足)パトロール隊長の武藤貴大さんは、11年間過ごした熊の湯を後にし、2023年10月1日より石井スポーツ長野店(ながの東急百貨店 別館シェルシェ5階)で販売員として勤務されます。

米国の状況

米国でもスキー場の深刻な人手不足が続いています。
大手スキー場運営会社のVail Resortでは、2002年に冬季オリンピックが開催されたユタ州パークシティ・マウンテンリゾートで、時給20ドル以上、医療・福祉サービス付きでアルバイトを募集しています。
物価が違うので単純な比較はできませんが、20ドルとは2700円(135円/ドル計算)で、日本の3倍近い高給です。
それでも、人が集まらず2月に入っても募集が続いていました。

 

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アルバイト不足の原因

スキー場の規模、レンタル、レストラン、売店など運営により必要とするアルバイトの人数は大きく異なりますが、年間20万人を超える利用者が訪れるスキー場では、500~1000名のアルバイトが必要です。

ディズニーランドのような通年営業のレジャー施設であれば、社員、契約社員、アルバイトともに通年雇用することができるので、働き手も安心感があります。
しかし、スキー場は冬の間、長くても4、5か月程度の雇用しか保証されておらず、残りの期間は他の仕事を行う必要があり、応募することに二の足を踏む人がでてきます。
学生のように、一時期に働ければよいと考える労働力もありますが、募集に苦戦しています。

地元の方の労働環境の変化

スキー場は豪雪地帯、すなわち人が住むのに適さない場所にあります。
もともとそのような地域では、主要産業が農業で、農家の方は冬の間は働くことができず、都市部に出稼ぎに出ていました。
そのような環境に冬場の働き口創出のため、バブル期に地元自治体がこぞってスキー場を建設しました。
出稼ぎに出ていた男手は、冬の間スキー場で働くことで、年間を通して家族と暮らすことができるようになり、また自治体の財政もスキー客で潤いました。

時代は流れ、労働環境に変化がでてきました。
農村の若手は都市部で就職をし、農家の減少と共に高齢化が進行しています。
また、地元に残った方も会社に勤めながら農業を続ける兼業農家が多くなり、スキー場で働ける人が減ってきています。

学生の雪山離れ

もう一方のアルバイトの担い手は大学生です。
少子化により大学生が減ったと思われている方が多いと思いますが、実はその逆で大学生の人数は増え続けています。
文部科学省の学校基本調査によると、2022年度の大学生数は過去最高の263万2216人となっており、大学生アルバイト減少の原因は、趣味の多様化による雪山離れと考えられます。
また、雪山好きであっても寮での共同生活に不安を抱く人が増えたことも一因ではないでしょうか。
データは見つけれなかったのですが、大学生のサークルへの加入率が激減したと言われています。
他人との関わりを苦手としている人にとって、スキー場の寮の相部屋で見ず知らずの人と生活することは高いハードルであることは容易に想像つきます。
アルバイト料は高騰しており、一部のスキー場では首都圏よりも好待遇です。
それでも、人手が集まらないという事は、大学生にとって魅力のあるアルバイト先ではなくなったということでしょう。

 

アルバイト不足の解決策

簡単に答えが見つかる問題ではありませんが、営業を行うためにはアルバイト不足を解決する必要があります。
各スキー場が行っている対策を見ていきたいと思います。

待遇(時給)を上げる

アルバイトを増やすうえで一番に思いつくことが、時給をあげるということで、近年急激に上昇した時給は大都市圏を超えるまでになっています。
最低賃金も上がっていますが、それ以上の勢いでアルバイト料はあっがています。
スキー場のある地域からすると、破格の賃金です。
逆に言うと、そこまでしないと人を集めることができないということでしょう。

2023年10月発効の最低賃金時間額(時給)
()内は2022年10月発効額

  • 北海道:  960円  (920円)
  • 岩手県:  893円  (854円)全国最低
  • 新潟県:  931円  (890円)
  • 長野県:  948円  (908円)
  • 東京都:1113円(1072円)全国最高
  • 愛知県:1027円  (986円)
  • 大阪府:1064円(1023円)

時給1650円以上

  • 北海道:ニセコ東急 グラン・ヒラフ

時給1300円以上

  • 福島県:猪苗代スキー場

時給1280円以上

  • 福島県:北日光・高畑スキー場
  • 福島県:裏磐梯スキー場

時給1200円以上

  • 北海道:ニセコビレッジ スキーリゾート
  • 北海道:ニセコアンヌプリ国際スキー場
  • 新潟県:神立スノーリゾート
  • 長野県:野沢温泉スキー場
  • 長野県:スノーリゾート ロマンスの神様
  • 長野県:志賀高原 横手山・渋峠スキー場
  • 長野県:白馬岩岳マウンテンリゾート
  • 長野県:白馬八方尾根スキー場
  • 長野県:エイブル白馬五竜
  • 長野県:White Resort 白馬さのさか

時給1100円以上

  • 岩手県:安比高原スキー場
  • 栃木県:マウントジーンズ那須
  • 新潟県:石打丸山スキー場
  • 新潟県:ガーラ湯沢スキー場
  • 新潟県:苗場スキー場
  • 富山県:イオックス・アローザ
  • 長野県:スノーリゾート ロマンスの神様(旧木島平スキー場)
  • 滋賀県:グランスノー奥伊吹
  • 鳥取県:だいせんホワイトリゾート

定休日の設定

スキー場の休業日、あるいはリフトの運休日を設けることは現実的な人手不足の解決方法です。
1本のリフトの運行には、最低4名(乗り場2名、降り場2名)が必要です。
実際はもっと多くの人が働いていますが、常時4名のリフト係が必要とした場合、毎日リフトを運行する場合と週5日運行する場合を考えてみます。
週休2日と考えると、週5日の運行であれば4名で足りますが、毎日運行となると5.6名が必要になります。人間なので割ることはできないので、6名必要という事です。
他のリフトの要員と調整を行うことはできますが、単純に考えると、2日間営業日を減らすと2/3の人数で運行でき人手不足の解消になります。

土日祝、年末年始のみ営業

  • 新潟県:休暇村妙高ルンルンスキー場
  • 福島県:尾瀬檜枝岐温泉スキー場(春休みも営業)
  • 長野県:ニンジャスノーハイランド
  • 北海道などのローカルスキー場

火・水定休日

  • 福島県:グランディ羽鳥湖スキーリゾート
  • 長野県:開田高原マイアスキー場

その他

  • 北海道:旭ヶ丘スキー場(毎週月曜日、月曜日が祝日の場合は火曜日)
  • 富山県:宇奈月スノーパーク
  • 富山県:あわすのスキー場
  • 福井県:新保ファミリースキー場

リフトの運休

人員の確保が出来る見込みがなく、効率の悪い、あるいは老朽化したリフトの営業を行わないスキー場も増えてきました。
リフトは、シーズンを通して運休の場合と平日のみ運休の場合があります。

リフトの統廃合

2本のリフトを1本にし、効率よくゲレンデをカバーするという案もあります。
しかし、新設リフト自体が珍しい昨今、赤字であえいでいるスキー場に新たな投資を行える体力は残っていません。
同様な取り組みとして安比高原スキー場は、もともとのゲレンデレイアウトが良かったということもあり、滑走できるゲレンデをあまり減らすことなく、ゴンドラ・リフトの営業本数を6本まで削減できました。

自動改札の導入

リフト(除く、ロープトゥ)は索道の一種であり、鉄道と同じ法律のもとで運行されています。
それゆえ、回数券を販売していないスキー場でも、リフトの乗車人数を数える必要がり、人手がかかります。
自動改札を導入することにより、乗車人数を数える作業が自動化され、リフト運行に必要な人数を削減することができます。

導入スキー場急増中! リフト自動改札システム はこちら

通年雇用・契約

ここ数年、夏営業に力を入れるスキー場が増えてきました。
企業として夏の間も収益をあげることができ、そして、通年雇用者を増やすことで優秀な人材を確保できるようになります。
また、契約社員・アルバイトも通年契約を行うことができます。
業界横断的な取り組みとして、妙高市では夏は農業・林業、冬はスキー場での雇用を行うことを検討しています。

人材不足解消へ「妙高はねうま複業協同組合」設立準備 はこちら

 

最後に

全国的に多くの業種で人手不足が続いていて、スキー場のみアルバイトが集まるということ考えにくいことです。
それでも、雪山を愛する(アルバイトを行いたいと思う)方々は多くいるので、スキー場が市場規模にあった適正数になれば人手不足が緩和されます。
最盛期には700か所を超えていたといわれるスキー場も、2023/2024シーズンには500か所弱まで淘汰されてきましたが、それでもまだまだスキー・スノーボード人口に比べてスキー場の数が多すぎます。
しかし、半数以上のスキー場は自治体が所有しており、スキー場に関わる人々の生活があるので、実際に廃止という決断は行うのは難しい問題です。
実際、毎年億円単位の赤字がでていても、運営を続けているスキー場が多々あります。

コロナ前の10年間、スキー場の利用者数に大きな変化はありませんでした。
すなわち、雪山を愛する人(需要)は減っているわけではないので、スキー場(供給)が適正数になり利益を上げれるようになれば、それが従業員・契約社員・アルバイトにも還元され健全な状態になっていくのだと思います。

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